読み物・真田さん1回読みきり1
私は結構好きだったりするんですがねぇ
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きっついネ
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いつもいつも、険しい顔しか見たことが無い。
そんなアナタと私、同じ机に向かい合わせ。
「何故が風紀委員なのだ」
「ちょ、そんなの私に言わないでよ」
「髪の毛が必要以上に茶色い!スカートの長さが短すぎる!!」
爆発したように机をたたいて怒る。
「人は見かけによらないって言うじゃないのよ」
「屁理屈を言うな!」
結局会議もままならず、時間が来た。
アナタは手元の書類をまとめて、大きなバッグを担いだ。
「会議はこれで終了だ」
「は~い」
そう言って、テニスコートへ向かうアナタ。
そうね、私も部活あるし。
足早に美術室へ向かう。
「ねー、、委員会どうだったの?あの真田君と同じでしょ?」
「どうもこうもないよ(汗)、怒鳴られて終わり」
「えー、でもさ、真田君って結構のこと観察してるよね、細かいことよく知ってるもん」
「え”」
「それに案外人気あるっぽいし、良かったね?w」
観察されているんだ、そう思うとなんだか不思議な感情がわいてきた。
おまけに人気者?!あんなに怒りんぼうなのに?
「怒ってばっかりに見えるけど、結構優しいよ、真田君」
「へぇ・・・」
毎日顔を合わす度に怒鳴られている私にとって、優しいという表現がとても新鮮に感じた。
美術室を出て、テニスコートの横を通る。
後輩の後片付けを怖い顔をしながらも手伝っているアナタが居た。
「優しい・・・ねぇ」
そんな事を考えながら、私はバス停に向かう。
バス停に着いたときにはもう、バスが出た後だった。
私は駅前まで歩くことにした。一人で歩いて帰るなんて結構久しぶりだった。もう日も落ちて、街頭の明かりがまぶしい。
「あ、雨だ」
ポツンと頬に冷たい物が落ちてきたと思ったら、もう遅く。
雨は本格的に降ってきた。
と、思った。
「何をぼんやりしているのだ」
「あれ、真田君」
私の頭上には、アナタがさしてくれた黒い大きな傘が雨をはじいてくれていた。
「あ、ありがと?」
「風邪をひくぞ」
そう言うアナタは相変わらず、険しい顔。
私は思わず噴出した。
「な、何がおかしいのだ!?」
「だって真田君って何してても険しい顔なんだもん」
「そんなつもりはないのだが・・・」
「私と話している時結構険しい顔だよ?」
「それはだな・・」
「それは?」
アナタの顔を覗き込む私に、ちょっと困った顔をして帽子のつばを下げた。
「は放っておけないのだ、赤也と同じだ」
苦し紛れに、部活の後輩の名前を取ってつけた。
「きっついネ」
「む??」
「もっと素直にしておけばいいんじゃない?損してるよ?」
私の言った言葉がなかなか理解できていないようだった。
「でもさ、ありがとうネ、心配してくれてるんだよね?」
「そ、そのようなものだ」
「今はそれでいいよ」
アナタの動揺っぷりが、とてもおかしくて
でもきっと、滅多に人に見せない姿なんだろうなと容易に察しが付く。
「今まで怒鳴ったり、やたらと髪の毛とか細かい事注意してたのも?w」
「・・・調子に乗るな」
「あー。ごめんね、真田クン」
険しい顔して優しくするなんて、なかなかやるね、 そんなことされたら心臓に悪くてきっついネなんて言ったら、どうなるのかな。
どっちが先にギブアップかな。
★end★
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いつもいつも、険しい顔しか見たことが無い。