読み物・跡部様1回読みきり1
俺様は好きですか?
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家庭科実習
- 家庭科、私の唯一まともにできる教科。運動も、計算もあまり得意でない私が赤点を取った事が無い奇跡の教科。
「おい、 」
「なによ、跡部様」
「様とはなんだ様とは」
私の彼氏でもなんでもないこの俺様な跡部様。
毎回毎回、私を呼ぶ。
私は樺地ではないのだ。
イケメンでなかったら、グーで殴ってやるところだ。
「今日お前ら家庭科実習だろ?ちゃんと作ってこいよ」
「はい?」
「俺様の舌を納得させるのは至難の業だぜ」
勝手にいつも決めている。
私の話なんてこれっぽっちも聞いていない。
聞いていても、きっと跡部マジックで変換されている。
「それじゃぁな、ちゃんと持ってくるように」
「はいはい・・・・」
私は出来上がったブツを包み、生徒会室に向かう。
本来なら、跡部様に実習で作ったものなんて持っていこうものなら、全校女子生徒に殺されるところだ。
何故か、私の場合は哀れまれている。ナゼだ。
「です、入ります」
「遅いぞ」
「はいはい・・・」
私はできたブツを跡部様に差し出す。
包みを開くと、バニラの香りが漂う。われながら力作だ。
「クッキーか」
「ソウデス」
一枚、口に入れた。
暫く沈黙が続く。
何かの料理番組か、これは。
「もう少し」
「はい?」
「もう少し甘さは控えないと、毎日は食えねぇな」
「毎日食べる気なんですか、跡部様」
あきれていると、いつの間にか跡部様が私の前に立っていた。
流石に接近されると心臓に悪い。
私は一歩下がった。
「何逃げてんだよ」
跡部様が私の腕を握った。こんなに強く握られたのは初めてだった。
「お前、俺様以外に食わせるやつでもいるのか?」
明らかに、誤解とイラつきで顔が険しい。
「そ、そんなことはアリマセン、決して」
「どうだかな」
つかんでいた腕を、無造作に放された。
なんだか、少し心がきしんだ。
「跡部様」
「」
同時に声を発した。
又、沈黙か続く。
「悪かったな、俺はただ」
「いいよ、跡部様以外食べてくれないもん、大丈夫」
そうか、と小さく聞こえた。
心なしかホッとした跡部様の顔を見て、私もきしんだ心が元に戻った。
「まぁでも、なかなかの味だったぞ、」
跡部様のこの笑顔と、私の髪をムシャっとする瞬間、私は多分これの為に頑張っているんだなって、不覚にも思う。
「又頑張るよ、跡部様」
「様はやめろ様は」
★end★
- 家庭科、私の唯一まともにできる教科。運動も、計算もあまり得意でない私が赤点を取った事が無い奇跡の教科。